2007年 09月 30日
菊地みゆき「ふくろ展」ありがとう
「菊地みゆき ふくろ展」が終わりました。
期間中、おおぜいの人にご来店いただき、
また、みゆきさんの作品をお買い上げいただき(ほぼ完売の状態でした)
ほんとうにありがとうございました。
【1】 『売れる』作家は会場によく顔を出す
会期中、みゆきさんがちょくちょく店に寄ってくださり、
お客さんの応対をしていただきました。
彼女がひつじ屋にいてくれたおかげで、
お客さんが「ふくろ」を買ってくれたなぁ・・・、
みゆきさんが、その「ふくろ」にどれだけ愛情をこめて製作したか、
小さな部分にどれだけの工夫が凝らされたものであるかを、伝えることができたからこそ、
お客さんは、お金を払って自分のものにしようと決心したんだろうなぁ・・・、
そう思うことが何度もありました。
作品が売れることはありがたく、たいせつなことですが、
それと同時に、作品を通じて人と『出会う』こと、
その出会いこそが作家の財産となり、道を切り開いてゆくのだと感じさせられました。
【2】「かわいい」って何?
お客さんがひつじ屋のドアを開け、みゆきさんの「ふくろ」を見て、
「かわいい!」という反応がとても多かったように思います。
さらに、「かわいい」の語尾に小さな「ん」が付いて
「かわいいん」となったとき、財布の口が力強くひらくのだと、納得。
女性にとって「かわいい」というのは最上級の褒め言葉と思いますが、
では彼女たちは、みゆきさんの「ふくろ」の何に反応して
「かわいい!」と声を上げるのでしょうか。
かわいい ①自分より弱い立場にある者に対して保護の手を伸べ、望ましい状態に持って行ってやりたい感じだ。
②小さくて頼りない(弱よわしい)点に好感を抱き、大切に扱いたくなる感じだ。 【新明解国語辞典第五版より】
①はこの場合違うとして、②はどうでしょう。たしかにそういう部分はあると思いますが、
女性はもっと複雑で、微妙で、デリケートに、なんだかよくわかりませんが
みゆきさんの「ふくろ」について「小さくて頼りない」はちょっと違う気がします。
「かわいい」は、わたしにはあなたのことがわかる、理解できる、好きだ、
あなたをそばに置いておきたい、いつも近くにあって大切にしたい、
そうした親密な気持ちを抱いたとき、「かわいい」と発するのかなー。
と、まぁ、考えましたけど、それにしても、「かわいい」は、広くて、深くて、むずかしいですね。
で、そののち、みゆきさんに話を聞き、ほかの人のブログを読んだり、辞書を引いたり、知り合いに感想を聞いたり、
行き着いたのは、「素朴」という言葉で。
【3】「素朴」を底に持つかわいらしさ
そぼく ①都会人のように、洗練された所は無いが、真情を行動で裏付ける意味で人に訴える所の有る様子。
②華やかさや手の込んだ細工はほとんど見られないうちに、太古・原初の持つ大らかさやほのぼのと心暖まる豊かさがしみじみと感じ取られる様子。 【新明解国語辞典第五版より】
いいなぁ、この解釈。
②なんて、みゆきさんのふくろを語るのにすばらしくふさわしい表現ではないでしょうか。
「太古・原初の持つ大らかさやほのぼのと心暖まる豊かさがしみじみと感じ取られる様子」
それを「かわいい」のひとことで褒めているのだとしたら、それもスゴイことですが・・・。
会期中、みゆきさんからたくさんの情報を仕入れました。
おいしい店、かわいい雑貨の店、才能ある工房、すてきな音楽・・・。
個展をひらくとき、いつもひつじ屋では、作家からCDを1枚お借りしています。
作家おすすめの、個展とひつじ屋の雰囲気に合いそうな音楽を、とお願いしています。
みゆきさんが持ってきてくださったのは「クレモンティーヌ/パリス・ウォーク」。
シンプルで、品がよくて、たのしい雰囲気が、
みゆきさんと、彼女の「かわいい」ふくろたちに、よく似合っていました。
『クレモンティーヌ/パリス・ウォーク』