2013年 12月 22日 ( 1 )

旅する巨人

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 大正十二年四月十八日、故郷の人々に見送られて島を離れるとき、善十郎(宮本常一の父=引用者注)は宮本に向かってこれだけは忘れぬようにせよと、十ヵ条のメモをとらせた。それは次のようなものだった。

①汽車に乗ったら窓から外をよく見よ。田や畑に何が植えられているか、育ちがよいか悪いか、村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺きか、そういうところをよく見よ。
 駅へ着いたら人の乗り降りに注意せよ。そしてどういう服装をしているかに気をつけよ。また駅の荷置場にどういう荷が置かれているかをよく見よ。そういうことでその土地が富んでいるか貧しいか、よく働くところかそうでないところかよくわかる。
 
②村でも町でも新しく訪ねていったところは必ず高いところへ登って見よ。そして方向を知り、目立つものを見よ。
 峠の上で村を見おろすようなことがあったら、お宮の森やお寺や目につくものをまず見、家のあり方や田畑のあり方を見、周囲の山々を見ておけ。そして山の上で目をひいたものがあったら、そこへ必ず行って見ることだ。高い所でよく見ておいたら道にまようことはほとんどない。

③金があったら、その土地の名物や料理は食べておくのがよい。その土地の暮らしの高さがわかるものだ。

④時間のゆとりがあったらできるだけ歩いてみることだ。いろいろのことを教えられる。
 
⑤金というものは儲けるのはそんなにむずかしくない。しかし使うのがむずかしい。それだけは忘れぬように。

⑥私はおまえを思うように勉強させてやることができない。だからおまえには何も注文しない。すきなようにやってくれ。しかし身体は大切にせよ。三十歳まではおまえを勘当したつもりでいる。しかし、三十をすぎたら親のあることを思い出せ。

⑦ただし病気になったり、自分で解決のつかないようなことがあったら、郷里へ戻って来い。親はいつでも待っている。

⑧これから先は子が親に孝行する時代ではない。親が子に孝行する時代だ。そうしないと世の中はよくならぬ。

⑨自分でよいと思ったことはやってみよ。それで失敗したからといって親は責めはしない。

⑩人の見のこしたものを見るようにせよ。そのなかにいつも大事なものがあるはずだ。あせることはない。自分の選んだ道をしっかり歩いていくことだ。
                      (佐野眞一『旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三』より)










きょうも無事ブログ更新できました。ありがとうございます。
























突然の災難が降りかかったとき、人は恐怖に立ちすくむ。
この厄災で、財産や社会的な地位や名誉を失うのではないか。
愛する者や自分の身が危険にさらされるかもしれない。
そんな恐怖でわたしたちの目は曇り、進むべき道を見失う。
しかし、わたしたちには、
もともと困難を乗り越える力が授けられている。
心の中から、この恐れを追い出せば、その力がよみがえる。
恐れるな、道はひらける。(マハトマ・ガンディー)

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by hitsujiya-azumino | 2013-12-22 18:36 | 本を読む | Comments(0)